感情日記の書き方 — 「何があったか」から書かないで

感情日記を書こうとしてノートを開き、最初の一行で止まったこと、ありませんか。

たいてい、こう書き始めます。

「今日、会社で上司が…」

そして数行書いて、止まる。書いてみると、ただ出来事を並べただけで、読み返しても感情はどこにもない。三日ほど書いて、ノートを閉じます。

私もそうでした。そして理由を、ずいぶんあとで知りました。

感情日記を「何があったか」から書くと、失敗します。

出来事から書き始めると、私たちは自動的に「説明モード」になります。誰が何をして、それがどう理不尽で、自分はどう対応すべきだったか。これは感情を書くのではなく、裁判記録を書いているんです。書き終えてもすっきりしないのは当然です。

感情日記の書き方 — 「何があったか」から書かないで


1. 体から始める

感情は、頭より先に体に来ます。だから最初の一行をこれにすると、ぐっと書きやすくなります。

「今、体はどんな状態か」
  • 肩が上がっていないか
  • あごに力が入っていないか
  • みぞおちが重くないか
  • 呼吸が浅くないか
  • どこにも力が入らないか

これは考える必要がありません。ただ観察して書くだけ。そして不思議なことに、体を書き終えると、感情の名前が自然とついてきます。

「みぞおちが詰まっている。呼吸が短い」→ ああ、私は今、不安なんだ。

順番を変えただけなのに、最初の一行で止まらなくなります。

感情日記の書き方 — 「何があったか」から書かないで


2. 「イライラ」と書かない

感情日記でいちばん多く出てくる言葉が「イライラ」です。でもイライラは感情の名前ではなく、いくつもの感情をひとまとめに覆ったフタに近い。

一枚だけめくってみてください。イライラと書いたけれど、本当は——

  • 軽んじられた感じ — 私の言葉が届かなかった
  • 悔しさ — 自分ばかりがこうしている
  • 不安 — このままだと、まずい気がする
  • 疲れ — もう、これ以上は無理だ
  • 寂しさ — 分かってくれると思っていた

同じ状況でも、どれかによって必要なものはまったく違います。軽んじられたなら言うべきだし、疲れたなら寝るべきです。

正確な名前をつけるだけで、次の行動が決まります。感情日記の実質的な効き目は、たいていここから生まれます。

感情日記の書き方 — 「何があったか」から書かないで


3. 三行で十分です

長く書こうとすると、書けません。形をこう固定してしまいましょう。

1. 体 : 今、体はどうか
2. 名前 : この感情の名前は何か
3. 一行 : だから今、言いたいこと

例です。

体 : 肩が固まって、ため息が出る。
名前 : イライラだと思っていたけど、寂しさだ。
一行 : がんばったこと、分かってほしかった。

これで終わりです。30秒で書けます。そして30秒だから、明日も書けます。

感情日記の書き方 — 「何があったか」から書かないで


4. きれいに書かない

感情日記が崩れる二つ目の理由がこれです。誰が見るわけでもないのに文章を整える。誤字を直す。そのうち面倒になって、書かなくなる。

  • 悪文でもいい
  • 汚い言葉が混ざってもいい
  • 結論がなくてもいい
  • 「分からない」で終わってもいい

感情日記は作品ではなく、はけ口です。整えた瞬間、吐き出しは止まります。

感情日記の書き方 — 「何があったか」から書かないで


5. 読み返さなくていい

「書いたあとに読み返して振り返ろう」という助言は多いですが、私は逆を言います。

読み返さなきゃと思うと、書けません。あとで読む自分を意識した瞬間、また、きれいに書いてしまうから。

書くその瞬間に、もう変化は起きています。ぼんやりした感情が文章になって形を持ち、形を持ったものは自分より小さくなる。それで十分です。読み返さなくていい。

感情日記の書き方 — 「何があったか」から書かないで


6. 書けない日は一行

毎日書くという誓いが、感情日記を殺します。書けない日は、ただこう書いてください。

「今日は何も書きたくない」

これも記録です。そしてこの一行を書いた日は、まるごと飛ばした日より、翌日書ける確率がずっと高い。

感情日記の書き方 — 「何があったか」から書かないで


まとめ

  • 体から書く — 出来事から書くと裁判記録になる
  • 「イライラ」を一枚めくる — 正確な名前が次の行動を決める
  • 三行でいい — 30秒だから明日も書ける
  • きれいに書かない — 整えた瞬間、吐き出しが止まる
  • 読み返さなくていい — 書く瞬間に、もう変化は起きている
  • 書けない日は「書きたくない」と書く

感情日記の書き方 — 「何があったか」から書かないで


ただ、これで足りない時もあります

  • 眠れない日が続く、または眠りすぎる
  • 食べるのがつらい
  • 洗う・掃除といった基本的なことができない
  • 自分を傷つけたくなる

そんな状態なら、記録で解決しようとしないでください。記録は心を整理する道具で、治療ではありません。その時は、専門家に会うのが正解です。

私は心の専門家ではありません。上の方法は、私が自分で試して残ったもので、それ以上ではありません。


🌲 私は「名もなき森」という匿名の記録の場所をつくっています。
コメントも評価もなく、ただ書きとめるだけの場所です。
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